アベノミクスや円安の恩恵により、2015年はとても景気が良かったと思います。もちろん皆これまで失われた20年により永続的な成長があるとは考えておらず、支出に対しては慎重なため、実感は乏しいかもしれません。
今のように収入が比較的増やしやすい時期こそ、お金まわりの支出を見なおして手元にお金を残して置きたい。そこで検討したいのが特定支出控除です。
サラリーマンはこれまであまり恩恵を受けてこなかった確定申告ですが、昨今の特定支出控除制度の改正によって、仕事への投資が経費で認められる範囲が拡大しました。
スーツや図書に関わる費用が控除対象になる!
という話を聞いたことがあるでしょう。この制度について解説をしますが結論だけ先に述べますと「スクールや資格取得にかかった費用が多い年は是非とも検討するべき制度」と言えますね。
課税所得の計算と特定支出控除制度
課税所得とは年収総額ではありません。年収から各種控除を引いたものが課税対象となる所得になります。簡単に言うと今のような計算式です。
課税所得 = 年収 - ①給与所得控除 - ②所得控除 - ③特定支出控除
年収から各種控除に加えて③特定支出控除を引いたものが課税所得です。③の特定支出とは何か? 必要な経費のことです。自営業者であれば必要な経費を抜いた金額が課税所得となる。そのため経費に計上できるものを積極的に探す。という話は聞いたことがあるでしょう?
給与所得者、いわゆるサラリーマンであっても必要な経費ってあるよね? だからそれを昨今の実情に合わせて経費として認めますよ。という形で使いやすく制度が改正されたのです。(2013年より)
特定支出控除対象となる経費
この経費の範囲が大幅に広がりました。
- 通勤費
- 転居費
- 資格取得費
- 研修費
- 帰宅費用
- 衣服代
- 図書費
- 交際費
これらの経費が対象となります。
通勤や転居、単身赴任など会社に通うために必要な費用や、自己研鑚のための資格取得や研修、図書の代金、会社へ着ていくためのスーツ、そして何より新しいのは交際費も対象になることです。
会社からこれらの費用の支給がある場合、上限を超えた金額対象になります。こうしてみると大体のサラリーマンに該当する制度だということが分かります。これは経費になるのでは?と思い浮かぶシーンも多いでしょう。
個別に見ていきましょう。
① 通勤費
交通機関の料金、ガソリン代はもちろん通勤車の修理費用なども含まれます。
② 転居費
引っ越しに関わる費用です。宿泊交通費、引越し業者の費用そのもの
③ 資格取得費用
必要な資格を取得するための費用です。弁護士や会計士などの士業を営める資格の取得も控除の対象となります。
④研修費
英会話スクール、マネジメント研修などの費用です。
⑤帰宅費用
こちらは単身赴任者が自宅へ戻る旅費にあたります。1ヶ月4往復分まで。こちらは会社では月1支給が定型だとおもいますがそれを上回ります。
⑥⑦⑧は勤務必要経費に分類されます。この3項目あわせて上限が65万円になっています。
⑥衣服費
スーツ代、ビジネスシューズ代、ワイシャツ、ネクタイなど対象になります。
⑦図書費
職務に関連する書籍、新聞、雑誌などの購入費。
⑧交際費
こちらが異色。得意先や仕入先に対する接待、贈答などの費用と定義されています。
節税効果を計算
さて気になる節税効果を計算してみます。年収は600万円を想定です。
年収・・・600万
給与所得控除・・・600万× 0.2 +54万=174万
(収入金額×20%+540,000円で計算)確定申告しない場合の課税所得は
課税所得 600万 - 174万=426万
では特定支出控除を計算してみましょう。
衣服代 ・・・ 10万
図書費 ・・・15万
交際費 ・・・ 30万
この3つで65万以下です
転勤費・・・ 20万
通勤費・・・ 10万
研修費 ・・・ 英会話学校 40万
合計 125万が控除対象になります。
特定支出控除の計算
125万 - (174万÷2)= 38万円
この38万円が特定支出控除です。
確定申告した場合の課税所得は
600万 - 174万 -38 = 390万円
このように課税所得の額が小さくなっています。続けて所得税の計算*1をしましょう。
●特定支出控除の申告無し
課税所得426万 所得税=424,500-
●特定支出控除の申告有り
課税所得390万 所得税=352,500-
というわけで7万円程度のオトク、節税が出来る訳です。かなり大きな額ですね。
特定支出控除を受けるための準備
制度について理解したところで、準備にも触れておきます。
まずは特定支出控除に関わる費用の領収書を貰っておくことです。このときの宛名は会社では無く個人になります。そして申告の時期に会社から 「 給与等の支払者の証明書 ( 特定支出に関する勤務先の証明書 ) 」 を受け取ります。(勤務先に事前に相談してみてください)
そして窓口にて確定申告の流れになります。
どのような人が特定支出控除をするべきか?
年収600万円の人の場合は控除対象費用が87万円を超えた時からが対象になります。ただし、⑥⑦⑧は勤務必要経費の上限は65万円までです。つまり研修や資格取得、転居などの自費負担が多くない年で達成するのは難しいかも知れません。
冒頭つたえた通り「スクールや資格取得にかかった費用が多い年」に普段から図書を利用して自己研鑚する習慣を持つ人か、接待交際の機会が多い人が検討する制度だと言えますね。